コロナ重症患者になった時の治療薬はイベルメクチンではない!
コロナに感染した後は、軽症から中等症、重症へと症状が悪化していくケースがあります。
イベルメクチンは予防と軽症治療の効果が判明しており、中等症から重症への効き目は分かっていないため、服用は推奨されていません。
世のニュースはイベルメクチンをコロナ特効薬かのように報道していますが、海外の臨床試験で分かっている効果は予防と感染後の軽症治療だけ。
現在、医療現場で中等症から重症患者に処方されるのはどういったお薬なのでしょうか?
さっそくチェックしていきましょう。
目次
コロナ中等症から重症にはステロイド剤が用いられる
イベルメクチンは、かぜやインフルエンザのような軽症治療や、コロナ感染予防の薬として効果が期待されています。
コロナウイルスは軽い症状が出ている間に体内でどんどんウイルスが増殖していき、やがて中等症や重症を誘発します。
イベルメクチンはこのウイルス増殖を抑制する効果で軽症治療をして、重症化にならぬように予防します。
しかし、コロナ中等症~重症になってしまうとイベルメクチンの効果は期待できないかもしれないといわれています。
コロナウイルスが増殖した後は、身体の免疫システムが過剰に働いて炎症状態になります。
これはサイトカインストームと呼ばれる現象で呼吸困難になったり、最悪人工呼吸を必要とする事態に。
ステロイド剤は身体が炎症状態になっている状態を緩和して、呼吸困難の原因となっている肺炎を鎮静化します。
現在、ステロイドを処方する期間は10日間といわれています。
軽症者にステロイド剤が使用できない理由
「最初からステロイドを飲んでおけばいいのでは」
と疑問に思いませんか?
確かにイベルメクチンではなく、最初から効果の強いステロイド剤を飲んでおけば治療ができるのではという考えになるのは理解できます。
しかし、ステロイド剤は抗炎症作用や過剰に働いている免疫反応を抑えるお薬。
コロナ軽症の状態で早期服用をしてしまうと逆効果になり、返って症状を悪化させてしまう恐れがあるのです。
実際、自宅療養中にステロイド剤を早期に飲んでしまい、危うく症状が悪化する寸前だったという患者はいます。
コロナ治療薬としてステロイド剤を投与するタイミングを見極めるのは、医者でも難しいといわれているのです。
そのため通販などで購入した効果の強い薬を自己判断で飲むというのは、あまりおすすめできる手法ではありません。
国内でコロナ治療薬として認可される薬
国内では現在4種類の薬がコロナの治療薬として認可されています。
・デキサメタゾン(ステロイド)
・バリシチニブ(関節リウマチ薬)
・カシリビマブ/イムデビマブ(中和抗体薬)
その他にも10種類以上の薬が開発途中であり、コロナに有効な薬はないかと研究が急ピッチで進められています。
基本的に厚生労働省が認可しているコロナ治療薬は、現段階では5種類ということを覚えておきましょう。
レムデシビル
レムデシビルは抗ウイルス薬であり、中等症の症状が始まった時点で投与される薬です。
もともとエボラ出血熱の薬として開発されていた過去があります。
通常、新しい適応症に薬を承認するにはかなりの時間がかかりますが、レムデシビルは厚生労働省が特例で承認を急いだ薬。
2020年5月にコロナ治療として認可されました。
中等症患者の治療薬として急激に需要が高まっており、現在50ヵ国でコロナ治療薬として承認されています。
デキサメタゾン
重症患者に処方されるステロイド剤です。
イギリスで行われたランダム化試験では、重症患者の致死率を低下させたと判明しており重症患者への標準的な治療法の1つとなっています。
デキサメタゾンはステロイド剤なので、前述したように呼吸困難の症状がない軽症者には効果を発揮しないことが分かっています。
そのため、ランダム化試験を行ったイギリスの研究チームや米NIHのガイドラインにも、人工呼吸器を必要としない患者への投与は控えるようにと公表しています。
バリシチニブ
関節リウマチ薬や、既存の治療法では治癒しないアトピー性皮膚炎の炎症を抑制するために用いられる薬です。
JAK阻害薬とも呼ばれており、炎症や免疫システムを管理しているサイトカインの暴走状態を誘発するJAKという酵素を阻害するように働きかけます。
コロナ治療薬としてはステロイドと同じように抗炎症作用の効果を利用しており、肺炎症状を緩和できるとされています。
抗ウイルス薬であるレムデシビルと併用することによって、病状回復までの期間をレムデシビル単剤の人よりも1日短縮できたという症例が報告されているのです。
カシリビマブとイムデビマブ
コロナウイルスが元気な細胞に侵入しないように働きかけます。
海外で行われた臨床試験では、1回の投与で入院や死亡のリスクを70%も減少させたと報告されており、症状消失までの期間を短縮したようです。
アメリカでは濃厚接触者に処方する薬としても認可が下りていますが、本国ではまだ認可されていません。
抗体カクテル療法の薬を認可した直後は、入院患者のみに処方するという意向だったようですが、感染者が増加したことにより現在では外来患者への投与も認めているようです。